デカフェ(カフェインレス、カフェインフリーなどとも)とはカフェインを取り除いたり少ない材料を使うことにより含有量が通常よりも少ないものの事をいいます。
デカフェはカフェインが気になる妊娠・授乳中の人や健康上の理由で止められている方に需要があるほか、遺伝子的な要因(※)や健康志向から西欧諸国では日常的に利用されてます。
ところが味や香りの面で通常のコーヒーに劣るとされたり、処理のプロセスによってはコストがかかり価格に反映される事から日本ではあまり普及していません。
ヨーロッパではデカフェという名称に対して一定の規格が設けられてますが、日本では需要の少なさもあり名称に対するカフェイン量の基準もありません。
※西欧人には遺伝的にカフェインへの耐性が低い人が多く、カフェイン酔い(二日酔いも含めたお酒に酔う時と同じような症状)を起こす場合があります。そのためカフェイン除去の研究は100年以上前から行われていて、需要もコーヒーの全取引量の10%程度といわれます。
カフェインは覚醒作用や解熱鎮痛・強心・利尿作用があり、はじめてコーヒーから分離に成功したためカフェインと命名されました。
コーヒーやお茶類にはもともと含まれているほか、コーラなどの清涼飲料水の多くやエナジードリンクといったものにも添加されています。
なお、お茶の場合はタンニンと結びつきその効果が抑制されることから、興奮作用は弱く緩やかに作用するといわれます。
よく妊娠・授乳中はカフェインは控えるようにといわれます。
これはカフェインの代謝に関わる酵素の一つが妊娠すると減る事で影響が残りやすくなったり、胎児はカフェイン代謝能力が著しく低いために早産や低出生体重児、発達障害の原因になる場合もあるといわれるからです。
因みにタバコに含まれるニコチンはそのカフェイン代謝の酵素を増やすので排出されやすくなり、喫煙者はコーヒー等を眠け覚まし目的に摂取しても、非喫煙者よりその効果は低いとされます。
またカフェインは最終的に尿酸となり体内から排泄されます。
ニコチンによる代謝促進により尿酸の生産量が増えるとともに、カフェインの利尿作用で体内水分量が低下する事でさらに尿酸は発生しやすくなります。
そして尿酸は痛風の原因物質のため、喫煙者でコーヒー等を日常的に摂取している人は痛風を発症する危険性が通常より極めて高くなるといわれます。
痛風は男性の病気と思われがちですが、女性の痛風発症は喫煙およびコーヒーの日常的な過剰摂取が原因ともされます。
デカフェを作る方法としては
A:コーヒー豆からカフェインを抜く
というものと
B:カフェインを含まないコーヒー豆を作る
という2つの方法があります。
ただ、Bの方法はまだ実用化される段階ではなく、市場に出ているものはほぼAとなります。
そしてその方法にも何種類かあります。
①有機溶媒抽出
有機溶媒抽出とは蒸気で膨らませたコーヒー生豆を抽出槽に入れ、そこに有機溶媒を通してカフェインを抽出する方法で、1906年にドイツで開発された世界最初の脱カフェイン法といわれます。
カフェインが比較的水と混ざりにくく有機溶媒に溶けやすいことを利用しています。
使用する有機溶媒は、カフェイン以外の成分を損ないにくく、取り除くのが簡単であることが必要で、現在はジクロロメタンという物質が用いられます。
安価な方法ではありますが、カフェイン以外の成分の損失が大きいため風味で劣ることと、有機溶媒を直接生豆に接触させるため消費者が安全面での不安を抱きやすいというデメリットがあります。
②水抽出
水抽出方法はコーヒー生豆を入れた水槽に水を通してカフェインを水溶性成分ごと抽出し、続いてこの抽出した液体からカフェインを除去します。カフェインを除いた後の液体は再び生豆の槽に循環させ、抽出されなかったカフェイン以外の水溶性成分が再び生豆に戻します。
これは1941年に開発されたスイス式水抽出法(Swiss water method)と呼ばれるもので、安全性が向上する、カフェイン以外の成分の損失が抑えられる、といった利点があります。
③超臨界二酸化炭素抽出
超臨界二酸化炭素抽出とは、一定以上の圧力と温度を加えることで、気体と液体の両方の性質を兼ね備えた、超臨界流体と呼ばれる状態にした二酸化炭素でカフェインを抽出するもの。デカフェに応用することは1974年に開発されており、比較的新しい方法です。
二酸化炭素は他の物質よりも超臨界流体となる条件が易しく、他の物質との化学反応を起こしにくい特性を持ちます。また抽出後、常温常圧に戻せば二酸化炭素は簡単に取り除くことができ、万一残留してもその毒性を考慮する必要がないなど、優れた脱カフェイン法だとされています。
ただし、コストがかかるため出来上がったコーヒーの価格も高くなります。
いくつかデカフェのコーヒーを飲み比べましたが、アメリカ土産でもらったデカフェが美味しく、それを調べてみるとSwiss Water Processでカフェインを抜いているとのことでした。
そこで日本でもその方法でカフェインを抜いている豆を探して仕入れています。
デカフェは普通に抽出するとちょっと軽めの味わいになるので少し濃いめに淹れています。“言われてみると”という感じはしますが、違和感はそれほどではなく、珈琲らしさがしっかりある一杯だと思います。
妊娠・授乳中の方だけでなく遅い時間にコーヒーを飲む方にも是非一度試していただきたいです。